■いまいち流行らない熟成魚
いまいちブームに火のつかない熟成魚について書いていこうと思います。
なかなか流行りきらない理由に一般に熟成魚がほとんど売られていないことと、熟成させるための鮮度の良い魚を一般の方が買える場所が少なく、また熟成させるための手順も手間がかかることがあげられると個人的には思っています。
釣りをする方は熟成して食べる方が多いと思いますが、釣った魚というのは鮮度に関して言えば最高です。そして釣りをする方はほとんどの方が自分で捌くと思いますので熟成してより美味しく食べるための条件が揃ってるんじゃないかなと思います。
今まで熟成魚を食べたことがない方が熟成魚を口にするとその味の違いに驚くことと思います。
■そもそも熟成魚とは
魚に含まれるATP(アデノシン三リン酸)が時間経過と共に旨味成分イノシン酸に変わることで魚の旨味が引き出されるというのが科学的な熟成という意味だと思います。
まぁ正直科学的なことは専門じゃないのでよくはわかりませんが、とにかく適切な環境で時間経過させることで魚は確実に美味しくなります。
(鮮魚を否定しているわけではありません。鮮魚のコリコリの食感は大好きです)
そしてこの魚の熟成は非常に奥が深いです。
奥が深い理由に味のピークがどこにあるのか見極めるのが非常に難しいです。
魚体や脂乗りなどで熟成のピークは変わってきます。
総合的に判断してピークを見極めていきますが、これはある程度経験が必要になってくるのかなとも思います。
そして結局どのタイミングが一番美味しかったのか答え合わせができないので、試行錯誤に終わりがないというのが熟成魚の楽しいところでもあります。
■血抜きの必要性について
血抜きというと津本式究極の血抜きのイメージを持たれているかたが多いと思います。
購入した魚が血抜きされていない魚だった場合は津本式で血抜きをするのがおすすめです。
まったく血抜きされていない魚は身の血管に血が残っていて刺身で引いた時に見た目がどうしても悪くなるからです。
逆に血抜きされた魚であれば身のなかの血はある程度は抜けているので僕はそのまま熟成してます。
ただし鯖や青物なんかは血抜きされていても血液量が多いので津本式でもう一度しっかり血を抜いたほうがいいです。
■熟成方法について
白身のお魚に関して言えば氷温熟成が基本です。
氷温熟成とは1~2℃の水中で魚を冷やして熟成させる方法です。
家庭で熟成魚を作る際のオススメの方法はクーラーボックスに水をはって、その中に凍らせたペットボトルを入れて温度を下げる方法です。
クーラーボックスの性能にもよりますが、夏場は12時間に1回で冬場は24時間に1回の交換を目安にして温度を維持してください。
この中に低真空にした魚を、まるのまま熟成していきます。
■熟成のための魚の処理
ウロコは取らないようにしてください。魚の身をガードするものはできるだけつけっぱなしが良いです。
内臓は全て抜き取って血合いやエラの付け根付近の血もできるだけきれいに取り除いた方がいいです。血の付いているところは後から臭いがでてきます。
魚の表面のぬめりは包丁でできるだけ落としてください。こちらも臭いの原因になります。
あとヒレはお好みですが落とすのをおすすめします。ヒレもぬめりの元になる雑菌がたくさん付いています。
上記の処理を施したら魚の水分を十分に拭き取り、袋が破れないために新聞紙やチラシを巻きます。(グリーンパーチ紙があればベストです)
魚をビニール袋に入れてホースなどで人力で空気を抜いていきます。この時に使用するビニール袋は厚みが0.03mmか0.04mmが断然お勧めです。ホームセンターなどで普通に売ってます。
一般的なゴミ袋だと厚みが0.02mm程度しかないので強度が心もとないのと、空気を吸いだしにくいです。
最後に注意点ですが魚の内側にはペーパーを入れる必要はありません。そして魚を巻いたチラシや新聞紙は狙った熟成期間に達するまでそのままで大丈夫です。これはどちらも試してきて感じたことですが中にペーパーを入れると水分をペーパーが吸い取るので臭くなるのと、なんならその臭いが逆に魚に付いてしまいます。
■熟成魚の利点
これは完全に釣り人向けですが、大漁だった時に魚食べきれない状況があると思います。
でもクーラーボックスを使った熟成をマスターすると2週間ぐらいかけて味の変化を楽しみながら家で少しずつ時間をかけて魚を消費できると思います。
しかも釣りから帰ってきて疲れていても内臓を出して保管するだけなら当日の体力的な負担も低いと思います。
このクーラーボックスの熟成をマスターしてもらえたら、当日の魚を捌く労力を低減しつつお魚も美味しく食べられて一石二鳥になること必須です。
■熟成魚の料理法
やっぱり生食の刺身やお寿司が一番美味しいです。魚の濃厚な旨味が凝縮されていて非常に美味しいです。
もちろん火を通しての調理にも適しており、さまざまな料理に活用できます。特に熟成魚を用いた料理の一つとしてムニエルがあります。
ムニエルとはバターで焼いた料理の一つで、魚の繊細な味わいを引き立てる優れた方法です。以下に、熟成魚のムニエルの作り方をご紹介します:
【熟成魚のムニエルの作り方】
・材料
熟成させた魚のフィレ
小麦粉
塩とこしょう
バター
レモンの絞り汁
パセリのみじん切り
・作り方
魚のフィレを食べやすい大きさに切ります。塩とこしょうで軽く下味をつけます。
フライパンにバターを溶かし、中火で熱します。
小麦粉を平皿に広げ、下味をつけた魚のフィレを小麦粉にくぐらせます。
フライパンに魚を入れ、両面をこんがりと焼きます。焼き色がついたら、魚を取り出し、皿に移します。
バターの残りを使い、同じフライパンでレモンの絞り汁を加え、ソースを作ります。
火から下ろしたら、パセリのみじん切りを加え、ソースを完成させます。
熟成魚のムニエルにソースをかけ、お好みでレモンの輪切りを添えて、お召し上がりください。
熟成魚は生食やムニエルの他にも、塩焼きや煮付け、刺身など様々な調理法で楽しむことができます。熟成させることで、魚の旨味がより一層引き立ち、食卓を彩る逸品となります。熟成魚を用いた料理は、その豊かな味わいと風味で、特別な食事のひとときを演出してくれます。
■最後に
大まかな魚の熟成について書いてみました。
次回は魚種ごとの熟成期間など書いていこうと思います。